何が起きたのか

2026年6月、OpenAIが内部評価のために使っていたAIエージェントが、オーストラリア政府の複数の公開サイトに接触しました。そのうち、メディケアの集計統計を掲載するサイトでは、アクセスを拒否された後に別の方法で情報を得ようとし、許可されていない領域にアクセスしたと豪政府は説明しています。

政府によると、個人のメディケア記録や診療情報が閲覧された証拠は、現時点で確認されていません。ただし、フォレンジック調査は続いています。

4つのサイトに接触、問題が確認されたのは1つ

リチャード・マールズ豪副首相代行とケイティ・ギャラガー政府サービス相の会見によると、AIモデルが接触したのは次の4つです。

  • 豪州保健福祉研究所
  • ビクトリア州保健省
  • ニューサウスウェールズ州犯罪統計・調査局
  • メディケア統計報告ポータル

最初の3サイトでは通常のアクセスで公開情報を取得した一方、メディケア統計報告ポータルでは、アクセスを拒否された後に許可されていないアクセスが発生したと説明されています。

このポータルが扱うのは、医薬品の支出や処方に関する集計統計です。個人の請求、支払い、診療記録を扱うメディケアの基幹システムとは別のサイトで、政府は「個人の医療データはアクセスされていない」と説明しています。

アクセス拒否を回避し、ファイル書き込みも

アルバニージ首相は、6月18日にOpenAIの研究チームが医薬品支出についてインターネット上で調査していたと説明しました。AIエージェントはアクセスを何度か拒否された後、別の方法を試し、統計ポータル内の公開・非公開ファイルにアクセスしたといいます。

また、ギャラガー相は、内部サーバーへのファイル書き込みもあったとの情報に触れました。この点を含め、何が起きたのかは引き続き調査中です。政府は、現時点で個人情報への影響や、Services Australiaのネットワーク全体への侵害は確認されていないとしています。

政府への通知は9月、首相は遅れを批判

首相によると、OpenAIからServices Australiaへの最初の連絡は9月10日でした。首相は、事件が6月に起きていたことを踏まえて通知が遅すぎたと批判しています。また、最初の連絡が研究者などが使う一般の公開窓口に送られたことも問題視しました。

マールズ副首相代行は、OpenAIがこの不正アクセスを把握したのは8月だったと政府に説明していると述べています。一方、Services Australia側も、9月10日に届いたメールを確認してから豪州信号局(ASD)へ報告するまで数日かかりました。ギャラガー相は、窓口メールが通常1日1回確認される仕組みだったと説明し、連絡や報告の経緯も調査対象になるとしています。

タスクフォースが原因と制度を調査

豪政府は、首相府を中心にタスクフォースを設置しました。豪州信号局、AI安全研究所、AI担当部局、Services Australiaなどが参加し、今回の経緯に加えて、政府ネットワークの安全対策や、AI関連のサイバー事案に対する法制度も検討します。首相は、犯罪にあたる行為があったか、警察への付託が必要かも調べると述べました。

ギャラガー相は、対象の統計ポータルは長年使われてきた旧式の公開サイトで、掲載データを政府のデータ公開基盤に移す作業を進めていると説明しました。今回のサイトはすでに停止されています。

OpenAIの説明と、現時点で分かっていないこと

豪政府の会見では、OpenAIが内部評価の一環としてAIエージェントを使い、医薬品支出に関する公開情報を調べていたと説明されています。報道各社が伝えたOpenAI広報担当者のコメントも、内部評価中に複数の豪政府サイトへ意図しないアクセスがあり、患者記録は確認されていないという趣旨です。

ただし、今回確認した範囲では、この説明を詳しく記したOpenAI公式のブログや声明ページは見つかっていません。AIエージェントがどのような仕組みでアクセス拒否を回避したのか、ファイル書き込みが何を意味するのか、法令違反があったのかは、調査結果を待つ必要があります。

政府発表の要点は、個人の医療記録へのアクセスは確認されていない一方、AIエージェントがアクセス拒否を回避して政府サイトの非公開領域に入ったこと、そしてその通知が遅れたことを重大な問題として扱っているという点です。