2026年9月15日、CognitionはAIソフトウェアエンジニア「Devin」のクラウド環境で、macOSのサポートを開始しました。

これによりDevinは、これまでのWeb開発などに加えて、iPhone・iPad・Mac向けアプリをクラウド上で開発し、実際に起動して動作確認するところまで自律的に進められるようになりました。

今回重要なのは、単に「Swiftのコードを書けるようになった」という話ではありません。

iPhoneアプリを自分で操作してテストできる

一般的なコーディングAIでも、Swiftのコードを書き、コンパイルエラーを修正することはできます。

しかし、

「ビルドが成功した」

ことと、

「実際にアプリが正しく動いた」

ことは別です。

例えばゲームを作った場合、「アプリを閉じても前回の位置から再開できるか」を確認するには、実際にゲームを起動し、プレイし、一時停止し、終了し、再起動する必要があります。

Mac環境を手に入れたDevinは、この一連の操作を自分で実行して確認できるようになりました。

つまり、

コードを書く → ビルドする → アプリを起動する → 操作する → 問題を発見する → コードを修正する → 再テストする

という開発ループをAIだけで回せる範囲が大きく広がったことになります。

クラウド上にDevin専用のMacを構築

この仕組みでは、AWS EC2 MacのベアメタルMac上で、Appleの「Virtualization.framework」を利用してmacOSの仮想環境を動かしています。

さらにDevinは、作業途中のコードや依存関係をスナップショットとして保存します。

そのため一度セッションを停止しても、再開時に環境を一から作り直す必要はありません。

XcodeやiOS Simulatorも事前に準備され、macOS特有の権限確認などによってAIの作業が途中で止まりにくい環境が構築されています。

iOS SimulatorをAI自身が操作

さらに重要なのが、DevinによるGUI操作です。

DevinはiOS Simulator上のアプリを見ながら、ボタンを押したり、画面の状態を確認したりできます。

ただし、毎回スクリーンショットをAIに解析させてボタンの位置を探す方法では処理が遅くなります。

そこでCognitionは、macOSやiOSが持つアクセシビリティツリーを利用しています。

アクセシビリティツリーとは、画面上のボタンや入力欄などを、名前・役割・状態といった構造化データとして取得する仕組みです。

例えば「Resume」というボタンを画像から探すのではなく、

「Resumeという名前のbuttonを探す」

という形で直接取得し、その要素に対して操作できます。

必要な場面ではスクリーンショットも併用することで、構造と見た目の両方からアプリを確認します。

何がすごいのか

今回の発表には、新しいAIモデルのようなベンチマークスコアは公開されていません。

重要なのは性能スコアではなく、AIエージェントが扱える開発環境そのものがMacまで広がったことです。

これまでクラウド型AIエージェントにとって、Apple向けアプリ開発は難しい領域でした。

iOSアプリを本格的に検証するには、macOS、Xcode、Simulator、GUI操作などApple固有の環境が必要だからです。

Devinは今回、この環境をクラウド側に組み込みました。

その結果、人間がMacの前で操作し続けなくても、AIがApple向けアプリの実装だけでなく動作検証まで担当できるようになります。

どうやって使うのか

macOS環境はすでにDevin Cloudで利用可能です。

Devinのクラウドセッションを作成する際にMac環境を選択すると、iOS・iPadOS・macOS向けプロジェクトを開発できます。

ユーザー側もDevinが使用しているMacのデスクトップやiOS Simulatorをリアルタイムで確認でき、必要になれば途中から自分で操作することもできます。

今回のアップデートによってDevinは、単にコードを生成するAIから、実際のアプリを動かして結果を確認しながら開発を進めるAIソフトウェアエンジニアへ、さらに一歩近づいたと言えます。