
Claudeが紫外線の全天地図を作成、観測の空白を推定で補完
AI蝦名樹読了 4分Anthropicは2026年10月8日、研究支援アプリ「Claude Science」を使い、空全体を覆う紫外線地図を作成した事例を公開しました。取り組んだのは、ジョンズ・ホプキンス大学の天体物理学者で、Anthropicの研究者でもあるブリス・メナール氏です。
Anthropicは2026年10月8日、研究支援アプリ「Claude Science」を使い、空全体を覆う紫外線地図を作成した事例を公開しました。取り組んだのは、ジョンズ・ホプキンス大学の天体物理学者で、Anthropicの研究者でもあるブリス・メナール氏です。
地図は既存の観測データを統合し、空白部分を統計的な推定で補っています。すべての領域を新たに観測したわけではなく、約3分の1には推定が含まれます。
なぜ紫外線の地図には穴があったのか
宇宙は、どの種類の光で見るかによって姿が変わります。紫外線では、高温の星や、その光を散乱する薄いちりの雲などが浮かび上がります。
しかし、紫外線は地球の大気に吸収されるため、広く観測するには宇宙望遠鏡が必要です。主要な観測データを残したNASAの「GALEX」も、明るすぎる星で検出器が傷むのを避けるため、天の川の一部などを観測対象から外していました。
ほかの望遠鏡のデータを合わせても、空白は残ります。欠けた部分を推定する手法はありましたが、膨大な画像の明るさや位置を調整する作業に時間がかかり、完成した地図の制作は後回しになっていました。
Claudeは何をしたのか
Claude Scienceは、研究に必要なデータ収集、プログラム実行、計算、図の作成などをまとめて進めるアプリです。今回、Claudeは複数のAIエージェントに作業を分担させ、公開されている紫外線観測データを集めました。
続いて、異なる望遠鏡の画像を同じ明るさの基準、解像度、座標にそろえ、一枚の地図へ統合しました。星のまぶしさや観測条件の違いが、周囲の淡い光の測定に影響しないよう調整する作業も含まれます。
空白部分には、可視光や赤外線などの観測情報を使いました。紫外線が観測済みの場所で、ちりや星の分布と紫外線の明るさとの関係を学び、その関係から欠けた領域を推定しています。
研究者の技術説明によると、この補完を行うのは統計的な予測モデルです。Claudeが見栄えだけを頼りに宇宙の画像を描き足したものではありません。
精度はどう確かめたのか
検証では、実際の紫外線データがある領域を意図的に隠し、予測で復元した値と本来の測定値を比較しました。
Anthropicの記事では、改善を重ねた結果、実測値との差を約10%に抑えたと説明しています。一方、研究者の詳細ページでは、補完部分の典型的な誤差を約12〜14%としています。
この結果は、観測済みの領域を隠して行った試験のものです。未観測領域すべてで同じ精度を保証するものではありません。公開地図には、各部分のデータの由来と不確かさを確認できる情報が用意されています。
AIの点検でも見逃した不具合
制作は一度で成功したわけではありません。途中の画像には、観測画像の境界が薄い円として残っていました。大気由来の紫外線の光が、十分に取り除かれていなかったことが原因です。
この問題は、ほかのAIエージェントによる2回の点検でも見逃され、メナール氏が画像を見て発見しました。指摘を受けたClaudeは、約3万8,000件の観測データを修正しました。
今回の事例は、大量の処理をAIに任せられることに加え、専門家が出力を確認する役割も示しています。
誰が見られるのか、何に使えるのか
完成した地図は、研究者の公開ページで閲覧できます。紫外線、可視光、赤外線の表示を切り替え、同じ空が光の種類によってどう変わるか比較できます。
主な価値は、宇宙の構造を理解する教育資料として使えることです。推定で埋めた領域から、新しい星や銀河を発見したと判断することはできません。また、公開ページでは、人による査読はまだ行われていないと明記されています。
Claude Science自体はベータ版として提供され、macOSとLinuxに対応しています。提供開始時の対象はPro、Max、Team、Enterpriseで、TeamとEnterpriseでは管理者による有効化が必要です。
メナール氏によると、人が進めれば数週間かかる作業を、今回の取り組みでは数日で進められました。研究者が方針を決め、AIが長時間の処理を担うことで、手間の多さから着手できなかった資料を完成させた事例です。






