
Claudeが素粒子物理学の「9ループ計算」を達成。何がすごいのか?
AIテクノロジー蝦名樹読了 3分AIのClaudeが、素粒子物理学で研究者がまだ完成させていなかった「9ループ」の計算を行いました。Anthropicが2026年9月25日に公開した事例です。結果は、この分野で8ループの計算に携わった物理学者が確認しています。
AIのClaudeが、素粒子物理学で研究者がまだ完成させていなかった「9ループ」の計算を行いました。Anthropicが2026年9月25日に公開した事例です。結果は、この分野で8ループの計算に携わった物理学者が確認しています。
何を計算したのか?
粒子同士が衝突すると、どのような反応が起きるのか。物理学者はそれを予測するために、「散乱振幅」という式を計算します。
今回の「ループ」は、計算に含める粒子の相互作用の複雑さを表します。段階を増やすほど詳しく計算できますが、必要な作業も急激に増えます。今回と同じ対象では、2023年に研究者が到達した8ループが、それまでの最高記録でした。
なぜClaudeが挑戦したのか?
8月、元理論物理学者のMatt von Hippel氏がAI企業に課題を出しました。「大学の研究者が使える程度の計算資源で、自分の専門分野に残る難問を解いてほしい」というものです。
Anthropicの研究者が選んだのは、6粒子の散乱振幅を9ループまで求める課題でした。対象は「N=4超対称Yang-Mills理論」という、研究者が計算方法を試すための単純化された理論です。
どうやって結果を出したのか?
Anthropicの物理学者2人は、研究向けの作業環境「Claude Science」でモデル「Fable 5.1」を使い、計算する課題を伝えました。その後は、作業を続けて数時間ごとに進捗を報告するよう促したといいます。
Claudeは必要なプログラムを作り、研究者が開発してきた手法を使って計算を進めました。直接計算する方法と、関連する別の式を経由する方法の両方で結果を得ています。Anthropicによると、どちらの方法もClaudeの利用料を含めて約1,000〜2,000ドルで実行できる規模でした。
9ループという数字以上に、何がすごいのか?
結果を確認した物理学者Lance Dixon氏が驚いたのは、Claudeが9ループを直接計算できたことです。Dixon氏はその方法を難しいと考え、別の式を経由して答えを求めようとしていました。
直接計算には、細かく繊細な手順が必要です。途中で一つ間違えると結果が成り立たず、論文にも書き尽くされていない実装上の詳細があります。Claudeはそうした手順をプログラムに落とし込み、計算を最後まで進めました。
新しい物理法則を発見したのか?
今回Claudeが使ったのは、すでに研究者が作った計算方法です。また、中国科学院の研究チームも、GPT-6の助けを一部で使いながら、9ループの結果の重要な部分を得ていました。
今回確認されたのは、単純化された理論の中で、AIが専門家にも難しい計算を長時間進め、検証可能な結果を出したということです。現実の粒子実験を9ループで予測できるようになったわけではありません。AIが新しい物理の考え方を生み出せるかどうかは、今後の課題です。


